熊本市生まれ。環境照明、公共や民間の照明設計、都市の照明計画といった光環境の創出を行う。1999年 福岡タワーのライトアップを手がけ、この照明デザインで2000年に北米照明学会よりポールウォーターベリー特別栄誉賞と社団法人照明学会より照明普及優秀施設賞を受賞。同年、一連の照明デザイン活動に対して照明デザイン奨励賞を受賞する。アジア諸国においての照明改善プロジェクトなどへの参加の傍ら、都市景観に関するアドバイザー、審議会委員、大学の講師も務める。
総合プロデューサー  松下美紀(照明デザイナー)

ライトアップウォークについて

博多の長い歴史を語り継ぐ寺や神社が立ち並ぶ博多地区で開催される「ライトアップウォーク」は2006年からスタートし、今年で5年目を迎えます。
寺社の建物や庭園をライトアップすることで、市民や観光客の皆さまに昼間とは違う博多地区の魅力を発見していただき、歴史的な景観により親しんでいただきたいという思いからスタートしたイベントです。
御供所地区「承天寺」「東長寺」「妙楽寺」、冷泉地区「櫛田神社」の四カ所の会場で、今年は計5日間実施。日頃見ることができないエリアが特別公開されたり、博多の伝統の産品を販売する「博多夜市」や各種コンサートも開催されます。
昨年とはまたひと味違う見応えある光の響宴を、博多のまちで心ゆくまでお楽しみください。

まるで玉手箱を開けたような…。そんな感動が待っています

総合プロデューサー 松下美紀(照明デザイナー)

昨年から博多の総鎮守である櫛田神社を加え、エリアを広げ開催している「御供所・冷泉ライトアップウォーク」も、今年で5年目を迎えます。
数百年という時を刻み、歴史や伝統行事を語り継ぐ「博多の宝物」である寺社群。
そこに光を投じることに緊張感と誇りを感じ、試行錯誤を重ねてきた14社の照明メーカーの集大成ともいえる2010年です。
地域の暮らしに根付き親しまれる『日常の顔』、儀礼や祭り、年中行事など人生のハレの日を過ごす『非日常の顔』、一般の人々は踏み込めない神仏の世界を守る『神聖な顔』。寺社が持つ3つの顔を大切にするという基本コンセプトは今年も変わりませんが、今年は5年目ということもあり、そこに華やかさや楽しさを取り入れ、訪れた方々が、「わぁ~」っと思ってくださるような仕掛けを各所に散りばめています。
明るさを逆に抑え普段とは違う表情を醸し出す櫛田神社。建設中の五重塔に光をあて完成前の姿を仰ぎ見る東長寺。暗闇の中に本堂の窓明かりがやさしく浮かび上がる妙楽寺。「おいさっ」のかけ声がどこからか聞こえてきそうな影絵が楽しい承天寺。
昨年とは違う、昼間とは違う「博多の宝物」たちの姿が次々と現われる5日間の博多地区は、まるで「光の玉手箱」。ワクワクとした期待を抱いて各寺社を巡り、心地よい感動に包まれていただけるのではないでしょうか。博多でしか出会えない秋の夜の祭典をごゆっくりお楽しみください。

櫛田神社/Kushida jinjya

櫛田神社
 地元の人々から「お櫛田さん」と親しまれる博多の総鎮守。社伝によれば、天平寶字元年(757年)に伊勢国から大幡主大神を勧請し鎮祭するために創立されたといわれています。江戸時代には東長寺に属する神護寺が櫛田神社を管理していましたが、明治元年(1868年)に神仏分離令が発布され独立しました。
 境内には樹齢千年といわれる銀杏や蒙古軍船の碇石、秀吉の朱印状などを展示する歴史館もあります。また毎年夏に開催される博多祇園山笠では、早朝の太鼓の合図とともに舁き山が境内の清道を巡り、博多のまちへと駆け出します。

拝殿/Haiden

櫛田神社/拝殿 博多の総鎮守として、祭りの舞台として、日頃全体的に明るい光に包まれる櫛田神社は、逆に光を抑え明暗をつくり、奥行き感を出します。入口階段の狛犬、拝殿前、拝殿内の3体の御神体などに光をあて、それ以外のエリアは光を落とし、「明」「暗」が交互に登場。いつもとは違う櫛田神社の雰囲気を味わうことができます。

楼門/Romon

櫛田神社/楼門 鳥居に掲げられた「櫛田宮」、楼門に掲げられた「威稜」、そしてシンボルでもある赤く大きな提灯が闇に浮かび上がるような光を創り出しました。楼門をくぐると右側に「手水舎」あり、軒を照らすスポットの反射光を受けながら、身を清め本堂へ。心を鎮め、「お櫛田さん」に向き合う時間を演出します。
協賛:山田照明株式会社協賛:株式会社遠藤照明

博多べい/Hakatabei

櫛田神社/博多べい 豊臣秀吉の太閤町割りによる復興の際、戦国時代の戦火による焼け石や焼け瓦を埋め込んだ土塀が町中に作られました。そんな博多の歴史を伝える「博多べい」が櫛田神社にも移築されています。下から光をあてることで、手前の植栽のシルエットが浮かび上がり、昼間と違う博多べいの存在感を生み出しています。

稲荷社/Inarisha

櫛田神社/稲荷社 櫛田神社奥には閑静な空気に包まれる、朱色の鳥居と石畳が連続する「注連懸稲荷神社」と、茶室と庭園を持つ「織田茶寮」があります。日本の伝統色の美しさと温もりを感じさせる鳥居の光や、壁面に水紋が映し出される茶寮前の池の光など、回遊しながら幻想的な雰囲気を心ゆくまで堪能できます。
協賛:岩崎電気株式会社

承天寺/Joten-ji

承天寺
 承天寺は仁治3年(1242年)に創建。源頼朝によって鎮西奉行に任じられた大宰小弐武藤資頼が寺地を喜捨し、博多に居住して対外貿易に活躍した宋人貿易商の謝国明が大檀越(施主)となり、6年間、宋に留学していた聖一国師を招いて開山されました。勅許により官寺とされ、西海の巨刹として栄え、盛時には塔頭四十三寺を有したと伝えられています。
 聖一国師は宋から「うどん」「そば」「饅頭」などの製法を持ち帰り粉食文化を広めた人。750年以上前に始まった博多祇園山笠の起源にも深く関わり、博多の昔語りに欠かせない聖一国師の息吹をここで感じてください。

山門・勅使門/Sanmon & Cyokushimon

承天寺/山門・勅使門 天皇陛下の勅使をお迎えするための門である勅使門には、十六菊の家紋が配され、両サイドからこの紋に光をあてることで、より厳粛な雰囲気を醸し出します。また、勅使門前の塀と山門に向かう塀には、山笠をモチーフにした影絵が登場。大小さまざまな影やカラーを組み合わせることで祭りのにぎわいや楽しさを表現しています。

仏殿/Butsuden

仏殿 開創750年を記念して、昭和28年(1953年)に解体された開創時の仏殿を復元。重層入母屋造の唐様仏殿は、曲線を描く屋根の形状と軒先の均一に並ぶ垂木、それを支える組み物が美しい。その繊細な造りを一層際立たせる光を下部から与え、より幻想的なシーンを創り出します。
協賛:コイズミ照明株式会社協賛:ヤマギワ株式会社 福岡営業所

泉水庭/Sensuitei

承天寺/泉水庭 ライトアップウォーク時にのみ拝観できる泉水庭は、洗濤庭から住職の居室である方丈を通り抜けた奥に広がります。庭園内の木々、灯籠、庭石そして背景に生い茂る常緑樹の緑のコントラストを生かした光が庭の穏やかな静寂を際立たせ、水路沿いの小さな光が「流れ」を創出します。

洗濤庭/Sentotei

承天寺/洗濤庭 手前の白砂を玄界灘、奥の緑庭を中国と見立てた洗濤庭。大陸と博多の交流の歴史を今に伝え、その閑静な佇まいは昼までも都心にいることを忘れさせてくれます。ブルーのグラデーションの光に彩られる夜の洗濤庭は一層ロマンに満ちあふれ、言葉にできない感動に包まれることでしょう。

開山堂/Kaizando

承天寺/開山堂 通常は足を踏み入れることができない開山堂。小さな門をくぐり、苔むした地面にまっすぐ延びる石畳の参道脇には、五色の博多織をイメージした布を巻き付けた筒状の「五色灯籠」に光が灯ります。開山堂の中をのぞくと、年に一度しか拝観できない聖一国師の像が鎮座しています。
協賛:東芝ライテック株式会社協賛:株式会社ウシオスペックス協賛:株式会社ミツヤマ電気

東長寺/Tocho-ji

東長寺
 真言宗九州教団の本山で、弘法大師(空海)によって開かれました。平安時代初期の僧で、真言宗の開祖である弘法大師は大同元年(806年)、唐での修行を終え博多に帰着。真言密教が東方へ広がることを祈願し「東長密寺」と名付けました。大師はこのとき33歳、弘法大師創建としては日本最古の寺院です。
 本堂には、弘法大師自作と伝えられる弘法大師像、平安時代に制作された国指定重要文化財の木造千手観世音菩薩立像、弘法大師作といわれる不道明王立像の三体が据えられています。また、大仏殿には日本最大の木造座像「福岡大仏」が鎮座し、多くの人が拝観に訪れます。

六角堂/Rokkakudo

東長寺/六角堂 本堂前方に立つ六角堂は福岡市指定文化財であり、九州では大分県国東の国宝・富貴寺とここでしか見られない珍しい本瓦行基葺きの屋根を持ちます。随所に卓越した技術が見られる六角堂の上部を照らし上げ、建物全体のボリューム感を創出。LEDのスポットライトの光を受けた内部の仏像の繊細かつ優美な姿も見逃せません。

山門/Sanmon

東長寺/山門 東長寺の正面玄関となる山門は、昭和55年の修理の際、黒田藩の紋藤巴を入れた本瓦で葺き替えられています。中央に掲げた文字を明るく照らし上げ、来訪者を招き入れる正面玄関にふさわしい光のゲート空間の両サイドには、二体の仁王像が堂々たる姿でお出迎え。これから広がる光の世界への期待が高まります。
協賛:三菱電機照明株式会社

本堂/Hondo

東長寺/本堂
国指定文化財を祀る本堂は、美しい組物と重厚な造りが圧倒的な存在感を感じさせます。規則正しく並ぶ柱と軒を強調する陰と陽のコントラストを演出する光の基調となるカラーは、荘厳・高貴・雅をイメージした紫と静寂・沈静・清浄をイメージした青。それらの光が静かに変化し、「特別な時」を刻みます。
協賛:パナソニック電工株式会社

妙楽寺/Myoraku-ji

妙楽寺
 東長寺東側の南北に走る小路奥に立つ妙楽寺は、正和5年(1316年)、大応国師の高弟である月堂宗規によって開山されました。草創の寺地は博多湾岸にあり、近くに石築地(防塁)があったことから、石城山妙楽円満禅寺といわれたそうです。遣明使一行が宿泊するなど対外交渉の一拠点となっており、博多商人とも関連の深い寺院です。境内には貿易に従事し家産を興し豊臣秀吉の知遇を得て、戦火によって荒廃した博多の町を復興、町割りにも貢献した博多商人三傑の一人、神屋宗湛の墓があります。大陸交流に一端を担った妙楽寺でいにしえに思いを馳せましょう。

園路/Enro

妙楽寺/園路 山門をくぐると開山堂、方丈へと園路が続きます。壁面には左右から対照的に光があてられ、明と暗が交互に現れる園路を歩いていると、これから出会う光の感動が徐々に増していくようです。

山門/Sanmon

妙楽寺/山門 脇に老木が切り立つ切妻造本瓦葺の四脚門は、昭和56年の修理時に棟札の写しが発見されたことで、宝暦2年(1752年)に建設されたことがうかがえます。その歴史ある山門をアッパーライトで明るく華やかに照らし、訪れた人々を温かく歓迎します。
協賛:オーデリック株式会社

方丈/Hojo

妙楽寺/方丈 かつて美しい姿で元や明にまで知れ渡っていた高楼「呑碧楼」の名をたたえる本堂。今回は間接照明を室内に設置、やわらかい窓明かりが闇夜に浮かび上がり、優美でやさしい佇まいが姿を現します。また博多べいやういろう発祥の地の碑、お地蔵様などの光にも注目してください。

開山堂/Kaizando

妙楽寺/開山堂 棟札の写しから嘉永6年(1853年)の造作が推定できる開山堂は、水月庵という塔頭を改造したと伝えられています。低木の下から漏れる光、開山堂壁面を照らす光、樹木の枝葉を照らす光とそれぞれ光源を使い分け、重厚な木造建築が幻想的な姿で秋夜を彩ります。
協賛:大光電機株式会社、TACT Lighting Design Office協賛:株式会社GSユアサ・協賛:株式会社ユニソン西日本